プログラム
基調講演
10月21日 (水) 予定
座長:大倉 永也 (大阪大学)
シングルセルオミックスが切り拓く次世代生命科学
東京大学大学院 医学系研究科 野村 征太郎
生命現象を深く理解し、それを制御することは生命科学の本質である。そのためには、細胞という最小単位において個々の分子の挙動を捉えるシングルセル解析が、 究極的な生命科学の理解につながると考えられる。私は、「心臓はなぜ動かなくなるのか」「どのようにすれば心臓を再び動かすことができるのか」 という問いに対し、シングルセル解析を用いて心不全の進展に伴って生じる細胞レベルの分子動態を明らかにし、病態の中核を担う分子を同定し、 それらを標的とした多様な介入を試みることで、生命現象の“操作”に近づきつつある。本講演では、このような「シングルセルオミックスが切り拓く 次世代生命科学」について皆さまと議論し、今後の展望を共有したい。
招待講演1:空間トランスクリプトームからゲノム3次構造へ
10月21日 (水) 予定
座長:小口 綾貴子 (理化学研究所)
Xeniumで覗くマウス成長期骨端軟骨組織
東京大学 医学部附属病院 寺島 明日香
マウスを用いて成長期の骨端部にある軟骨組織を対象に、生後3日・6日・10日齢のXenium空間トランスクリプトーム解析の事例を紹介する。 切片作製時の実験上の工夫点を含めて共有したい。今回はXenium V1+カスタムパネルで実施した経験をもとに、 目的と組織特性に応じたパネル設計の考え方を議論する。
Visium HDを用いた炎症性皮膚疾患の解析
大阪大学 薬学研究科 鳥山 真奈美
皮膚は温度調節、異物排除、水分保持、感覚受容を担う多機能臓器であり、多種多様な細胞が集積している。 また、同種の細胞であっても、組織内局在が変われば成熟度や機能が全く異なることから、皮膚の組織構造を保持した状態での細胞の性質評価が求められていた。 我々は、疾患特異的な細胞群の機能理解を目指して、健常皮膚と炎症性皮膚疾患を対象に空間トランスクリプトーム解析(Visium HD)を行った。 解析により、我々が着目した疾患特異的な細胞群は、免疫活性と増殖活性が高い未成熟ケラチノサイトであることが示唆された。 本講演では免疫染色法との組み合わせによるVisium HD解析の可能性や、他検体を一度に解析するための方法についても紹介する。
ゲノム3次元構造やダイナミックeQTLから迫る疾患バイオロジー
慶應義塾大学 ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター 小嶋 将平
GWASなどの疾患関連解析で明らかとなった遺伝的な疾患リスクの背後にあるメカニズムの解明が、現在盛んに行われている。 我々はヒト集団規模でのゲノム3次元構造の比較や条件依存的な遺伝子発現変動に着目し、疾患関連バリアントの機能解析を行っている。 特にHi-CやRamDA-seq(ミドルスループットのRNA-seq)などのNGS技術と独自のドライ手法を起点に解析しており、 得られた知見とともに解析技術も紹介する。
招待講演2:AIの時代・NGSはどう使うのか
10月21日 (水) 予定
座長:Diego Diez (大阪大学)
AIに嫌われる勇気
東京大学大学院 医学系研究科 岡田 寛之
昨年のセンサス(Collective AI論文, Okada, bioRxiv 2026)により、AIは驚くほど研究者コミュニティに 受け入れられている実態が明らかになりました。論文執筆も爆速で終わる時代です(実験医学2026年5月号特集1)。 一方で、AIが身近な存在になったのはごく最近のことです。AIに無理に“合わせにいく”ことで、私たちは何か大切なものを 失ってはいないでしょうか。本講演では、あの楽しかったサイエンスを取り戻すために、AI時代に必要なサバイバル術を共有します。
(終)AI時代のデータ解析プログラミング
大阪大学大学院 情報科学研究科 瀬尾 茂人
2024年および2025年のNGS EXPOでは、「AI時代のデータ解析プログラミング」と題し、 生成AIやエージェントの登場によって変化しつつあるデータ解析の実装について紹介させていただきました。 2026年の10月には、あっちのAIとこっちのAIで相談しながら解析を進めてくれるようになっているかもしれませんし, 本当にプログラミングをしなくて良くなっているかもしれません. 本講演では、データ解析の現場で試行錯誤しながらAIを使っている立場から,できるだけ最新の情報をお伝えしたいと思います。
招待講演3:最新のバイオインフォマティクスで何ができるのか・AIの実践
10月21日 (水) 予定
座長:川崎 純菜 (大阪大学)
多剤耐性菌に有効な抗菌ペプチドのin silico創製
東京科学大学 AIシステム医科学分野 大谷 悠喜
薬剤耐性菌の拡大により、従来の抗菌薬が効きにくい感染症が大きな課題となっている。 そこで我々は生体がもつ抗菌ペプチドに注目し、AIを用いて膨大な配列から有望候補を見つけ、 さらに“進化”の考え方で性能を高める研究に取り組んできた。次の感染症脅威に備えるため、 従来薬が効きにくい耐性菌を見据え、AIで有望な抗菌ペプチドを見つけ出し最適化する“次世代創薬”の考え方と実例を紹介する。
ウイルスタンパク質の抗原性・適応度・進化の予測
大阪大学微生物病研究所付属バイオインフォマティクスセンター 伊東 潤平
ウイルス感染症の制御が難しい要因の一つは、ウイルスが進化を通じてその性質を急速に変化させる点にあります。 ウイルスの進化と流行のメカニズムを理解し、予測することが可能になれば、感染症の効率的な制御につながると期待されます。 本講演では、我々がこれまでに開発してきた、ウイルスの適応度・抗原性・進化を予測するAI技術を例に、 AIがウイルス感染症の制御にどのように貢献できるかを紹介します。
ゲノムとトランスクリプトームの融合による希少疾患の治療標的分子予測
大名古屋大学大学院 情報学研究科 難波 里子
治療標的分子の同定は医薬品開発において重要なプロセスであるが、近年、特に希少疾患や難治性疾患において、 有効な治療標的分子の枯渇が深刻な課題となっている。本研究では、ゲノムワイド関連解析(GWAS)とトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS) を融合することで疾患特異的な分子プロファイルを構築し、さらに標的分子候補に対する遺伝子摂動応答トランスクリプトーム (4,345遺伝子ノックダウン、4,040遺伝子過剰発現)との統合解析により、多様な疾患に対し治療標的分子を網羅的に予測する 機械学習手法を開発した。本講演では、提案するAI技術の概要に加え、希少疾患や難治性疾患への適用例について紹介する。
招待講演4:新しいバイオインフォマティクスツール
10月22日 (木) 予定
座長:椙下 紘貴 (東京大学)
高次元細胞状態の力学を読む ── 幾何学的データ解析 ddHodge
九州大学大学院 医学研究院 前原 一満
RNA velocity の普及により、細胞状態変化の速度(向き)を調べる解析が一般化した。 しかし、その多くは可視化に留まり、高次元ダイナミクスの構造情報は十分に活用されていない。 本発表では、細胞状態のダイナミクスをデータ多様体上の力学系として捉える数理的視点を、 実践的データ解析に導入した方法論 ddHodgeを紹介する。ddHodge によるポテンシャルや 状態安定性を手がかりにした動的オミクスデータ解析から垣間見える景色「速度(スピード)の向こう側」を共有したい。
ELASTomics:細胞力学と遺伝子発現を接続する単一細胞マルチモーダル解析
京都大学白眉センター/京都大学医生物学研究所 塩見 晃史
近年、細胞の力学特性は細胞の運命決定や組織の恒常性維持、疾患発症に関与する重要な制御因子として注目されている。 しかし従来の測定法では、力学特性の評価とRNA解析を同一細胞で取得することが技術的に困難であり、その分子基盤の体系的理解は進んでいない。 本講演では、我々が開発した微小電気穿孔法を基盤とし、細胞の力学特性と遺伝子発現を単一細胞レベルで統合的に 解析可能とする新規技術として ELASTomicsを紹介する。 本手法により、従来分離して扱われてきた「細胞力学」と「遺伝子発現」を直接対応づけた分子機構の解明が可能となる。 さらに、現在開発中の新規測定法も交えながら、最新の研究成果について紹介する。
基盤モデルとAIエージェントによる遺伝子発現データ解釈の新展開
理化学研究所 生命機能科学研究センター 尾崎 遼
単一細胞RNAシーケンスや空間トランスクリプトームの進展により、遺伝子発現データは爆発的に蓄積している。 一方で、これらは高次元かつ文脈依存的であり、細胞状態や機能・表現型との対応関係を体系的に理解することは容易ではない。 近年は大規模事前学習に基づく基盤モデルや、自律的に推論とツール利用を行うAIエージェントが、 生命科学データの解釈に新たな枠組みをもたらしつつある。本講演では国際動向を概観するとともに、 細胞レベルの機能・表現型と遺伝子発現を統合するデータベース「Cell IO」の構築と、データ解釈支援AIエージェントの開発を紹介し、 仮説生成や疾患研究への応用可能性について議論する。
招待講演5:新たなアプローチから
10月22日 (木) 予定
座長:岡田 寛之 (東京大学)
RNAモドミクスによる新たな生命制御機構の探索
東北大学大学院 薬学研究科 小川 亜希子
RNA修飾は多様な生命現象を司るが、その代謝産物である修飾ヌクレオシドの生理機能や動態は長らく未解明であった 。 我々は質量分析を用いた網羅的定量プラットフォームを構築し、RNA代謝産物が細胞内外で生理活性を持つ新機軸の制御系を同定した 。 本発表では、主要な修飾ヌクレオシドであるm6A(N6-methyadenosine)がアデノシンA3受容体のリガンドとして炎症を惹起する シグナル分子としての側面 と、その毒性を回避する解毒経路について報告する 。現在、この知見をヒト臨床検体解析へ拡張しており、 RNA代謝の視点に基づいた新たな病態診断・治療戦略の創出を目指している 。
少数細胞インプットから実現するエピゲノム・転写制御解析
理化学研究所生命医科学センター(IMS) 福嶋 悠人
エピゲノム解析は通常多くの細胞数を必要とするため、希少なサンプルに対して如何に少数細胞で解析を行うかは重要な問題である。 本発表では、体細胞では見られない特殊なエピゲノムパターン・転写制御を示すマウス卵を題材に、 少数細胞インプットから行うChIP-seq, CAGE-seq, 全長RNA-seqの実例について紹介する。
一細胞・空間トランスクリプトームのための深層生成モデリング
国立がん研究センター 小嶋 泰弘
本講演では、データの生成を可能とする深層学習モデル、深層生成モデルに生命現象に基づく数理・確率モデルを組み込むことで、 一細胞・空間オミクスデータがとらえる細胞・微小環境の多様性から背後の生命システムを復元するための手法を紹介する。 特に複数の細胞の空間的な配置が織りなす微小環境の多様性をとらえるための表現学習や、 細胞状態に応じたSubcellularドメインの推定を行うための技術を中心に紹介を行う。
招待講演6:医療の現場から 運動・疾患
10月22日 (木) 予定
座長:村上 真理 (大阪大学)
力学的刺激で運動を再構築する ― マルチオルガン・シングルセル解析が解き明かす全身メカノシグナル ―
国立障害者リハビリテーションセンター 澤田 泰宏
「Exercise is Medicine」と言われるように、適度な運動は健康維持・増進に極めて有効であるが、その作用メカニズムには未解明な点が多い。 本講演では、運動の本質を力学的刺激(メカニカルストレス)と捉えた仮説に基づき、全身的な健康効果の分子基盤を追究した、シングルセル解析を含む最新の研究成果を紹介する。
門脈マルチオミクス統合解析による左室駆出保持型心不全(HFpEF)の新規病態探索
大阪大学大学院 医学系研究科 坂口 大起
高齢化と生活習慣病で心不全の表現型は大きく変化しており、急増するHFpEFはかつて病態の主座とされた心室と 動脈の不均衡を是正しても予後が改善せず治療薬開発が停滞している。我々は第三の病態として体内最大の血液貯蔵 器たる門脈に着目、門脈血&壁マルチオミクス解析から新規治療標的を探索する試みを紹介する。
招待講演7:海洋研究におけるNGS
10月22日 (木) 予定
座長:西辻 光希 (福井県立大学)
海産非モデル生物を用いたNGS研究
福井県立大学 海洋生物資源学部 西辻 光希
NGSは様々な生物の研究にも用いられており、水圏生物も例外ではありません。 一方で手法はヒトやマウスなどモデル生物が対象となっていることが多く、新たにNGS研究する際の障壁となっています。 そんな「非モデル生物」を取り巻くNGS研究の問題と解決例、また水圏分野でNGSに期待されていることなどをご紹介いたします。
持続的な真珠養殖の実現に向けたアコヤガイゲノム情報の利用
一般社団法人日本真珠振興会 竹内 猛
真珠は細胞の働きにより生物の体内に作られる宝石である。明治時代に確立し、現在も受け継がれている日本の真珠養殖は、 海産二枚貝であるアコヤガイの性質を巧みに利用したバイオテクノロジーである。本発表では、ゲノム解析によりアコヤガイの 遺伝的多様性を調査する取り組みや、マルチオミクス解析による真珠形成メカニズムの研究を紹介する。
グリーンヒドラの染色体スケールゲノム情報を活用した光共生システムの解析
岡山大学 理学部附属臨海実験所 濱田 麻友子
刺胞動物グリーンヒドラは細胞内にクロレラを共生させ、栄養交換を行う光共生のモデル生物である。 同属には非共生性で捕食能力の高いブラウンヒドラが存在し、異なる生存戦略の比較解析も可能である。 本発表では、光共生機構および種分化の理解に向けた、グリーンヒドラの染色体スケールゲノム情報の 活用について紹介する。
二倍体ゲノムアセンブリが明らかにしたアワビゲノムの多様性
東京大学大学院大学院 農学生命科学研究科 平瀬 祥太朗
アワビ類は世界中で約60種程度が知られ、日本人にとって馴染み深い水産生物だと思います。 私は日本のアワビ類を対象に二倍体ゲノムアセンブリを行い、相同染色体由来の二つのゲノムアセンブリを比較しました。 その結果、シンテニーが保存されていない“非シンテニック”なゲノム領域を、広範囲にわたって有する 相同染色体のペアが複数見つかり、また、このゲノム構造は世界中のアワビ類で共通して見つかりました。 本講演では、アワビ類の誕生した白亜紀にまで遡る可能性のある、この特徴的なゲノム構造について紹介したいと思います。
一般講演 1
10月21日 (水)
座長:小口 綾貴子 (理化学研究所)
ポスター応募演題より選考
一般講演 2
10月22日 (木)
座長:瀬尾 茂人 (大阪大学)
ポスター応募演題より選考
協賛企業セッション
10月21日 (水) - 22日(木)
座長:後藤 直久 ・ 元岡 大祐 (大阪大学)
協賛企業募集中